学術発表

コーヒー原料を使用した新規コーヒー食品("Solid Coffee")の開発について報告

第27回国際コーヒー科学会議(ASIC)にて発表

UCC上島珈琲株式会社は、「新規コーヒー食品の開発」に関する研究を行いました。この研究成果は、第27回国際コーヒー科学会議(ASIC)(2018年9月17日~9月20日 オレゴンコンベンションセンター/アメリカオレゴン州)にてポスター発表しております。

発表年月日2018.9.18
英文標題Development of new chocolate-like product using coffee materials
和文標題コーヒー原料を使用したチョコレート様新規食品の開発
著者名小林司、福永泰司、岩井和也、成田優作、半澤拓、藤本浩史、垣内美紗子(UCC上島珈琲株式会社)
資料名
抄録【背景・目的】
 コーヒーはその特徴的な香りや味覚によって世界中の人々から愛される飲料であり、一般的にはコーヒー生豆を焙煎および粉砕した後、粉砕物に熱水を注ぐことで得られる抽出液をコーヒーとして飲用する。コーヒーが本来持つ魅力を最大限に活かすため、我々はコーヒー豆と類似点の多いカカオ豆に着目し、飲料形態以外のコーヒーの楽しみ方を追求した。
 具体的に本研究では、カカオ豆から作られる代表的な製品である「チョコレート」に焦点を当て、チョコレート中のカカオ由来成分であるカカオマスおよびココアバターをコーヒー由来の成分に置き換えることで、新規コーヒー食品("Solid Coffee"と命名)を開発した。

【材料および方法】
 コーヒー由来の成分として、微粉砕したコーヒー粉末およびコーヒーオイルを用い、これらに砂糖、植物油脂、粉乳、乳化剤を適量加えて数時間混練することでベース生地を作成した。生地を鋳型に流し込み、ゆっくりと冷却することで"Solid Coffee"を作った。合わせてコーヒー粉末の原料として、デカフェ処理を施したコーヒー豆を使用することで"Solid Coffee(デカフェ処理)"とした。
 コーヒー粉末およびコーヒーオイルをそれぞれ市販のカカオマスおよびココアバターに置きかえたものをコントロール品とし、"Solid Coffee(デカフェ処理)"の持つ官能および成分特性を評価した。

【結果】
 コントロール品と比較して"Solid Coffee(デカフェ処理)"は苦味、濃厚感を強く感じる傾向にあり、また成分分析の結果からは脂質が少ない一方で食物繊維を多く含むことが明らかとなった。さらに、"Solid Coffee"ではコーヒー由来のカフェインが多く検出されたが、"Solid Coffee(デカフェ処理)"では試料中のカフェイン含有量がコントロール品と同程度に低減されることが明らかになった。

研究の背景、目的

以下図1-aで示すように、一般的なチョコレート中のカカオ成分には、カカオ豆を焙煎、粉砕して作られる「カカオマス」とカカオ由来の油脂分である「ココアバター」があります。本研究ではこの「カカオマス」および「カカオバター」をそれぞれ、コーヒー生豆の焙煎、粉砕後の「コーヒー微粉砕物」およびコーヒー豆中の油脂分である「コーヒーオイル」に置き換えることで(図1-b)、新規コーヒー食品の開発に取り組みました。

図1-a. 一般的なチョコレートの製造フロー
図1-b. 新規コーヒー食品の製造フロー

研究概要

外観

以下の図2-aおよび図2-bはそれぞれ、新規コーヒー食品"Solid Coffee"の成形前の状態と成形後の外観です。

図2-a. 成形前の状態
図2-b. "Solid Coffee"の外観

官能特性

官能評価※の結果は図3に示す通りです。"Solid Coffee(デカフェ処理)"はSolid Coffeeと類似の傾向を示し、カカオ由来成分使用のコントロール品と比較して苦味、濃厚感、さらに香りが強く感じられるという結果が得られました。

図3. 官能評価特性

※官能評価はイノベーションセンター内の官能パネラー23人で実施。
各官能評価項目において、コントロール品よりも「強い」と感じた場合を1点、コントロール品と「同等」と感じた場合を0点、コントロール品より「弱い」と回答した人を-1点としてスコアを集計した。

成分特性

成分分析の結果、コントロール品と比較して"Solid Coffee(デカフェ処理)"は脂質量が少なく、食物繊維量が多いという結果が得られました(図4-a)。
 またカフェインとテオブロミンについて、コントロール品ではカカオ豆由来のテオブロミン含有量が多く、一方"Solid Coffee"ではコーヒー豆由来のカフェインが多く検出されました。"Solid Coffee(デカフェ処理)"ではデカフェ処理を施したコーヒー微粉砕物を使用したことで、カフェイン量がコントロール品と同程度に抑えられました。

図4-a. 脂質および食物繊維含有量
図4-b. カフェインよびテオブロミン含有量

まとめ

本研究により、一口で強いコーヒー感を感じることができる"Solid Coffee"を開発することができました。
これにより、従来の飲料形態とは異なる新たな切り口からコーヒーの魅力を伝えることが可能になりました。

用語解説

1)コーヒーオイル

コーヒー豆中に含まれる油脂のこと。コーヒー焙煎豆中の約15%を占めると言われます。
オイル中には香味成分が多く含まれています。

2)デカフェ処理

コーヒー生豆に様々な処理を施すことで、豆中のカフェインを取り除く処理のことです。
カフェイン除去方法としては「水抽出法(スイスウォーター方式)」や「超臨界二酸化炭素抽出法」などが一般に知られています。