学術発表
UCC上島珈琲株式会社は、「新規コーヒー食品の開発」に関する研究を行いました。この研究成果は、日本食品保蔵科学会第74回(2025年6月28日~6月30日 北海道オホーツク)にて口頭発表と、第30回国際コーヒー科学会議(ASIC)(2025年10月27日~10月31日 リスボン大学/ポルトガル リスボン)にてポスター発表しております。
| 発表年月日 | (日本食品保蔵科学会)2025.6.29 (ASIC)2025.10.28 |
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| 英文標題 | Effects of Powdered Sugar Content on the Aroma of Coffee-Based Confectionery |
| 和文標題 | 粉糖配合割合がコーヒー食品の香りに与える影響 |
| 発表者名 | 中川真緒、谷口明日香、岩井和也、成田優作(UCC上島珈琲株式会社) |
| 資料名 | — |
| 概要 | 【背景・目的】 焙煎豆を微粉砕したコーヒー粉に、焙煎豆から圧搾したコーヒーオイルなどを加えて成型した「コーヒー食品」を開発した(特許第6849552号)。コーヒー食品は一般的なコーヒー飲料と比べて、より豊かな香りと長く続く余韻を楽しめる点が特徴である。コーヒー食品のさらなる品質向上を目的として、副原料である粉糖に着目し、コーヒー食品に最適な配合割合を研究した。 【方法】 粉糖配合割合が0、10、20%のコーヒー食品について、官能評価と香気成分分析を行った。官能評価では、コーヒー食品を食べ慣れた社内パネリスト15名を対象として、香り、味、食感、好みについて定量的記述試験法(QDA法)と香りについてCATA法を実施した。 香気成分分析では、76種の香気成分を同定し、官能評価と相関のある成分を探索した。 【結果】 官能評価の結果、粉糖の配合が多いほど、コーヒー由来のポジティブな香りの印象が強く、食感もよくなり、結果として好まれやすい味になった。香気成分分析の結果も官能評価同様、粉糖の配合が多いほど、ポジティブに感じる香気成分が増加していた。さらに、コーヒー食品を常温で3ヶ月保存すると、粉糖の配合が多いほど、保存に伴う劣化を抑制することが判明した。以上の結果から、粉糖がコーヒー食品の風味保持・嗜好性に寄与することが示唆された。 |
焙煎されたコーヒー豆は粉砕と抽出の過程で香りが失われていきます。そのため、普段口にするコーヒーは、コーヒー本来の香りを全て楽しめているわけではありません。
UCCは長年コーヒーの香りをできるだけ保つ方法を研究してきました。
その成果の一つとして、20年かけて生み出された製品が“コーヒー食品”です。
コーヒー食品は、焙煎豆を微粉砕したコーヒー粉に、焙煎豆から圧搾したコーヒーオイルなどを加えて成型することで、コーヒーの香りをぎゅっと閉じ込めた製品です(特許第6849552号)。
香りを追求した製品であるコーヒー食品の品質をさらに向上させるため、副原料である粉糖の配合割合について検討しました。
なお、コーヒー食品の具体的な製造フローについては以下リンクにて公開しております。
コーヒー原料を使用した新規コーヒー食品("Solid Coffee")の開発について報告 | UCC上島珈琲
粉糖が0、10、20%配合されたコーヒー食品をアルミパウチで包装後、冷凍(-4℃)もしくは常温(25℃)で保管し、試験に用いました。粉糖の減少分は乳糖で補いました。
コーヒー食品を食べ慣れた社内パネリスト15名を対象に、粉糖0%のコーヒー食品を基準(5点)として、香り、味、食感、好みについて0~10点の尺度でQDA法を実施しました。また、同パネルに対し、あらかじめ設定した香り10項目の中から、各サンプルに該当すると思われる項目を全て選択するCATA法を実施しました。CATA法では、項目を選択した人数を割合(%)で算出し、比較しました。
コーヒー食品から76種の香気成分を同定しました。粉糖0%のコーヒー食品の分析値を1としたときの各サンプルの相対値を算出し、比較しました。
粉糖の配合が多いほど、香り立ちやコーヒー感が強く感じられ、ざらつきが減り、口どけが良くなりました。その結果、好まれやすい味になったと考えられます(図1)。
香り10項目のうち、サンプル間で変化が捉えられた項目のみを図2に示します。
粉糖の配合が多いほど、フローラル、ベリー、ドライフルーツといったポジティブな香りを選択する人が多かった一方で、粉糖が全く含まれていないと、焦げ臭のようなネガティブな香りを選択する人が多かったです。
同定した76種の香気成分のうち、サンプル間で特に差が大きかった香気成分のみを図3に示します。
CATA法による香りの評価の結果同様、粉糖の配合が多いほど、ポジティブな香気成分が多く、ネガティブな香気成分が少ない傾向でした。
コーヒー食品を常温(25℃)で3ヶ月保存後に、再度官能評価と香気成分分析を実施しました。粉糖が全く含まれていないコーヒー食品は保存に伴って風味が悪くなったと感じる人が多く、ネガティブな香気成分が増加していました。一方で、粉糖が配合されたコーヒー食品は、保存に伴う劣化を抑制しており、作りたてと同等の風味を維持していました。
コーヒー食品の副原料である粉糖の最適な配合割合を官能評価と香気成分分析を用いて検討しました。粉糖の配合が多いほど、コーヒー由来のポジティブな香りを感じやすく、好まれやすい味になりました。さらに保存に伴う劣化を抑制することがわかりました。
粉糖は香り保持効果があることが過去の報告で明らかにされています。コーヒー食品を口に入れると、香気成分が唾液に移り気相へ押し出され、嗅細胞へ到達することで、レトロネーザルアロマが発生します。本研究から、粉糖が多いほど香気成分が唾液から気相へと押し出されやすくなり、よりレトロネーザルアロマを感じやすくなることが示唆されました。
引き続き、コーヒー本来の香りを保つ方法を研究し、おいしさを追求していきます。
ヒトの感覚(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)を用いて、食品の品質特性(香り、味、食感など)を評価する手法。機器分析では捉えにくい「おいしさ」や「好み」を把握することができる。
食品や飲料に含まれる香りの成分を調べ、どのような香り物質がどの程度含まれているかを明らかにする分析手法。
0〜3,1〜5,−3〜+3などの数値尺度により、試料の特性や好ましさを点数によって評価する方法。感覚的な評価項目において、その強さを比較したいときなどに用いられる。
Check-All-That-Apply法。提示された複数の特徴項目の中から、当てはまるものをすべて選択してもらう官能評価手法。
食べ物や飲み物を口にしたときに揮発成分が喉の奥から鼻へ抜けて感じられる香りのこと。