学術発表
UCC上島珈琲株式会社は、「コーヒー食品の重要香気成分」に関する研究を行いました。これらの研究成果は、日本食品保蔵科学会第74回(2025年6月28日~6月30日 北海道オホーツク)および第34回日本清涼飲料研究会(2025年11月21日 日本教育会館一ツ橋ホール)にて口頭発表しております。
| 発表年月日 | (日本食品保蔵科学会)2025.6.29 (日本清涼飲料研究会)2025.11.21 |
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| 英文標題 | Investigation of Deterioration Indicators in Coffee-Based Foods by Sensory Evaluation and SPME-GC/MS Analysis |
| 和文標題 | 官能評価とSPME-GC/MS分析によるコーヒー食品の劣化指標の検討 |
| 発表者名 | 谷口明日香、中川真緒、岩井和也、成田優作(UCC上島珈琲株式会社) |
| 資料名 | — |
| 概要 | 焙煎豆を微粉砕したコーヒー粉に、焙煎豆から圧搾したコーヒーオイルなどを加えて成型した「コーヒー食品」を開発した(特許第6849552号)。コーヒー食品は一般的なコーヒー飲料と比べて、より豊かな香りと長く続く余韻を楽しめる点が特徴である。 一方で、香りの感じ方は時間とともに変化することが知られており、その変化の仕組みや、おいしさに関わる成分については十分に解明されていない。本研究では、コーヒー食品の香りに着目し、どのような成分が「おいしさ」や「香りの印象」に関わっているのかを明らかにすることを目的とした。 本研究では、ヒトが実際に香りを評価する官能評価と、機械を用いて香りの成分を詳しく調べる香気成分分析を組み合わせて、コーヒー食品の香り特徴を評価した。官能評価では、フルーティーさやキャラメルのような香ばしい香りなどを評価し、香気成分分析では、それらの香りに関係する成分の種類や量の変化を調査した。検討の結果、コーヒー食品の香りの特徴には、いくつかの代表的な成分が深く関わっていることが判明した。フルーティーな香りやキャラメルのような香ばしく心地よい香りは、アルデヒド類(Acetaldehyde、Propanal)やジケトン類(2,3-Butanedione、2,3-Pentanedione、3,4-Hexanedione、3-Methyl-1,2-cyclopentanedione)と呼ばれる成分と強く関係していることが確認された。さらに、時間の経過とともに香りのバランスは変化し、はじめはフルーティーで華やかな香りが感じられる一方で、徐々に香りの印象が移り変わっていく様子が確認された。また、官能評価の結果と香気成分分析の結果を組み合わせて解析したところ、「ヒトが感じる香り」と「実際の香気成分の変化」との間には明確な関係があることも判明した。 これらの知見を活用することで、より香り豊かで魅力的なコーヒー食品の開発や、品質設計の高度化に繋がることが期待される。 |
コーヒー食品は、焙煎豆を微粉砕したコーヒー粉に、焙煎豆から圧搾したコーヒーオイルなどを加えて成型することで、コーヒーの香りをぎゅっと閉じ込めた製品です(特許第6849552号)。
コーヒーのおいしさにおいて「香り」は極めて重要な要素です。しかしながら、どのような香気成分が「おいしさ」や「香りの印象」に大きく関わっているのかについては未だ十分に解明されていません。特に本食品は、コーヒー飲料と比較して香りの持続性が高い一方で、時間経過に伴う香りの変化は複雑であり、品質設計や製品改良に向けた定量的な指針が不足している点が課題でした。
そこで本研究では、コーヒー食品の「香り」に着目し、官能評価および機械を用いた香気成分分析を組み合わせることで、「おいしさ」に寄与する重要香気成分を明らかにすることを目的としました。
なお、コーヒー食品の具体的な製造フローについては以下リンクにて公開しております。
コーヒー原料を使用した新規コーヒー食品("Solid Coffee")の開発について報告 | UCC上島珈琲
本研究では、「ヒトが感じる香り」と「機械で測定する香り」の両面からコーヒー食品の香りを調査しました。
また、香りの変化の実態を明らかにするために、製造直後のコーヒー食品(基準サンプル)と、製造後に常温(25℃)で長期間保存したコーヒー食品(評価サンプル)を比較評価しました。
コーヒー食品を食べ慣れた社内パネリストを対象に、製造直後のコーヒー食品を基準(5点)とし、常温で長期保存したコーヒー食品の香気特性(香り立ち、フルーティー香、キャラメル香、ロースト香)および嗜好性(総合評価)について評価しました。
コーヒー食品から76種の香気成分を同定しました。各香気成分について、基準サンプルの分析値を100%とし、評価サンプルの相対値を算出しました。
官能評価の結果、長期保存により総合評価(嗜好性)のスコアが有意に低下し、すべての評価項目(フルーティー香、キャラメル香、ロースト香)においてもスコアの減少が認められました。
これらの結果から、コーヒー食品の嗜好性には「フルーティー香」、「キャラメル香」および「ロースト香」が関与していることが示唆され、特に「フルーティー香」は他の評価項目と比較して、コーヒー食品のおいしさへの寄与が大きい可能性が示されました。
同定した76種の香気成分のうち、長期保存に伴い、AcetaldehydeやPropanalなどのアルデヒド類、ならびに2,3-Butanedioneや2,3-Pentanedioneといったジケトン類が減少する傾向が認められました。これらの香気成分はフルーティー香やキャラメル香を特徴とする成分であり、本結果は官能評価の結果とも整合していることが示唆されました。
また、官能評価スコアと香気成分の相対値との相関を解析した結果、Acetaldehyde、2,3-Butanedione、2,3-Pentanedione、3,4-Hexanedioneがキャラメル様香気と強い正の相関を示すことが明らかとなりました(r=0.8以上)。一方で、フルーティー香については、いずれの香気成分とも強い相関は認められませんでした。以上の結果から、これら4成分はヒトが知覚するキャラメル香の変化と密接に関連している可能性が示されました。
官能評価と香気成分分析により、時間経過によるコーヒー食品の品質を比較評価した結果、コーヒー食品における重要な香気成分としてAcetaldehyde、2,3-Butanedione、2,3-Pentanedioneおよび3,4-Hexanedioneを特定しました。
これらの香気成分は、コーヒー食品の特徴であるキャラメル様の香ばしい香りに寄与することが示され、おいしさを構成する重要な要素であることが明らかとなりました。今後は、使用するコーヒーの品種や焙煎方法等の条件を最適化することで、「おいしさ」のさらなる向上に努めてまいります。
ヒトの感覚(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)を用いて、食品の品質特性(香り、味、食感など)を評価する手法。機器分析では捉えにくい「おいしさ」や「好み」を把握することができる。
食品や飲料に含まれる香りの成分を調べ、どのような香り物質がどの程度含まれているかを明らかにする分析手法。
食品中に含まれる香気成分の一種で、分子中に「アルデヒド基(-CHO)」と呼ばれる構造を持つ化合物。フルーティーな香りの形成に関与する。
食品中に含まれる香気成分の一種で、分子中に2つの「カルボニル基(-CO-)」を持つ化合物。バターやキャラメル様の香ばしい香りの形成に関与する。