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DJ、きものスタイリスト、コラムニスト。多様な肩書きを行き来するマドモアゼル・ユリアの挑戦の原動力

MADEMOISELLE YULIA DJ& Kimono Stylist

DJ&きものスタイリスト/マドモアゼル・ユリア

インスタントコーヒーの枠を超えて本格的な味わいを目指したUCC ザ・ブレンドが提供する「THE BLEND MAGAZINE」。ここでは、自分の枠を越える価値を創造し続けている人の言葉を紹介。新たな可能性を切り拓く、独自のスタイルやこだわりに迫ります。

今回登場いただくマドモアゼル・ユリアさんは、10代からDJとして注目を集めながら、きものスタイリスト、コラムニストなどそれぞれの肩書きを行き来しつつ柔軟に活動しています。いつでも新しい場所に飛び込めるようにどんなことを心がけているのか。フィールドを越えて活動されているマドモアゼル・ユリアさんに「挑戦の原動力」について伺いました。

DJ & きものスタイリスト / マドモアゼル・ユリア

2008年に現ユニバーサルミュージックよりDJ/シンガーとしてデビュー。2020年、京都芸術大学を卒業と同時に着物のスタイリングの仕事をスタート。同年にはイギリスのヴィクトリア・アルバート博物館で開催された着物の展覧会"Kimono Kyoto to Catwalk"のキャンペーンヴィジュアルのスタイリングを担当。DJのほか、着物のスタイリングや着物教室の主催、コラム執筆など、東京を拠点に世界各地で幅広く活躍中。YOUTUBEチャンネル「ゆりあの部屋」は毎週配信。
YouTube ゆりあの部屋 youtube.com/@melleyulia
Instagram @MLLE_YULIA

「好き」を掘り続けた結果、領域を超えた肩書きを持つように

10代からDJ兼シンガーとして活動を始め、国内外で幅広い活動をされているユリアさんですが、改めていまのお仕事内容について教えていただけないでしょうか?
マドモアゼル・ユリア(以下、ユリア):DJを軸にしつつ、着物のスタイリングや着付け教室の開催、帯やコートなど和装にまつわる商品開発、YouTubeで着物の情報の発信、コラムの執筆などをしています。
多彩な肩書きをお持ちですが、どのように領域を超えたキャリアを展開されていったのでしょうか?
ユリア:実は全部DJから派生した仕事なんです。DJをきっかけにシンガーとしてもデビューできましたし、ファッションブランドさんのイベントに出演したことがきっかけでファッション業界の方たちと出会いファッションの世界でもお仕事をするきっかけをいただきました。
次第にDJやファッションの仕事で海外にもよく行くようになって、それが機内誌の連載のお話にもつながりました。
DJを始めたことで自分の世界や出会う人の幅が広がって、いろんなものを見聞きし触れられたからこそ、いまのお仕事があるのだと思います。

世間の声よりも、話していて“ポジティブ”な気持ちになれる人の意見を大切に

ユリアさんは「エレクトロのDJ」として10代の頃から注目されてきましたが、世間から持たれているご自身のイメージについてどのように感じていらっしゃいましたか?
ユリア:世間から持たれるイメージについて、あまり意識したことはないですね。私の場合「こうでなくてはならない」と人の評価に縛られてしまうと、何がしたいのか自分でもわからなくなり、全く動けなくなってしまうんです。
周りから持たれるイメージを意識するのではなく、人と違っていてもその時の自分にとって居心地の良い自分でいたいと昔から思ってました。
世間からのイメージを気にせず、自分の好きなことを貫き通すためには、確固たる自分、自分を信じる力も必要かと思いますが、ユリアさんはどのようにそういった力を培われたのでしょうか?
ユリア:私の場合「自分を信じる強さがある」というよりは「好きなことしかできない」というのが大きいですね。実は結構柔軟に意見を取り入れてしまう所があるので、人の意見を気にしすぎると、何をしたらいいのか、そもそも何がしたかったのかもわからなくなるんです。だからあまり人の意見を聞きすぎないようにしています。また、元々パンクバンドをやっていたこともあり「みんながいいと言っている物事を疑う」といった反発心も少しあるのかもしれません。
一方で聞き入れた方がいい他者のアドバイス、視点などもあるかと思います。ユリアさんはどのように見極めていらっしゃいますか?
ユリア:基本的に、話していてポジティブな気持ちになれる人の意見は大事にしたいと思っています。結局他人の意見を噛み砕いて受け入れるのは自分なので、自分のテンションが上がらない意見はあまり意味がないと思うんです。ネガティブなコメントも「客観的に自分を見るための気づき」という意味で大切に思いつつ、アドバイスとして聞き流すこともあります。

現場主義のインプットを重ねて自信をつけ、
大量にアウトプットすることが大切

ユリアさんは「好き」を突き詰めて仕事にしている印象がありますが、「好き」を仕事にする上で心がけていることはありますか?

ユリア:私の場合、自信が持てないと仕事にできないんですよ。たとえば着物の仕事を始めるにあたっては、大学に入り直して京都で日本文化全般について学び直しました。着物に関する本や文献を大量に読んで、実際に着物に携わる人々に会って生きた知識や情報を得たりと、とにかく情報をインプットしました。
何を成し遂げるにしても、大量にインプットして初めてアウトプットすることができますよね。「自信がある」と胸を張って言えるようになるまで、とにかくインプットし続けて、たくさんアウトプットし続けることが自分の強みになると思っています。

インプットの数が、自信を生み、アウトプットの精度も高める、と。

ユリア:昔から私、“超現場主義”なんです。わからないことを、わからないまま終わらせたくない。DJを始めた当初も、そもそもDJとは何をする仕事なのかわからなかったので、クラブに行って他のDJのプレイを見て、わからないことは「この人だ」と思ったDJに自分から聞きに行って教えてもらっていました。

積極的に現場に学びに行かれるタイプなんですね。

ユリア:でもそれは本当に好きなこと限定で。人見知りなので、よほどの情熱があることだけですね。

年齢を重ねると新しいことに挑戦するのが億劫になったり、人に「わからないので教えて」と言いづらくなったりしませんか?

ユリア:私は逆で、若いときは知らないことが怖かったですし、知らないことはいけないことだと思ってましたが、いまは開き直って「わからないので教えてください」と何でも聞けるようになりました。リスペクトの気持ちが相手に伝わると、みなさん本当に親切に教えてくださいます。
たとえば着物の世界も初心者にはハードルが高いイメージがあるかもしれませんが「知りたいので教えてください!」と熱意を伝えたら、どんな疑問にも答えていただけます。
いま着付け教室を行なっている会場も、最初はDJの仕事でブッキングしていただいたご縁がきっかけでした。「ここで着付け教室ができたらいいな〜!」と思い、ダメ元でお願いしてみたら本当に着付け教室を開催させていただけることになって、やりたいことを口にする大切さを実感しました。

自分をブラさないことがチャンスを見極める力になる

ユリアさんの国内外を問わない人脈の広さが新しいお仕事や活躍の場をもたらすこともあるかと思いますが、目の前に現れたチャンスを逃さないために何か日頃から心がけていることはありますか。
ユリア:チャンスはタイミングだと思いますが、そのチャンスをつかむために、DJを始めて間もない頃は何かが起きていそうな現場には必ず行っていました。たとえば話題のイベントには必ず顔を出したり。自分のキャリアを形成していくにあたって、その場にいないと入らない情報をゲットして、自分を確立していくことが大事な時期ってあると思うんです。
さまざまな現場に行くことで、自分のやりたいことがブレることはないですか?
ユリア:仕事だと少ないですが、ブレることはもちろんありますよ。特に他人の思惑がたくさん関わっていて、自分一人で決断できないことが多くなると「なぜか物事がうまくいかない」という状況に陥りやすくなります。そういうときは、仲の良い友だちや親など、自分のことを深く知っている信頼できる人に相談するようにしています。
一つの領域で成功を収めると、他のジャンルの仕事や活動にチャレンジするのが難しくなるように思いますが、ユリアさんにとってさまざまな活動に飛び込んでいく原動力は何ですか。

ユリア:好奇心だと思います。すぐ調べたくなるし、興味を持ったら突き進んでしまうたちですね。私の場合、一つのことを極める職人的なタイプの人への憧れはあるのですが、自分自身はマルチプレーヤータイプだと思っています。
たとえばクラブDJは流行の波が大きくて、時期によっては「いまの音の流行は自分好みじゃない」と感じることもあるんですよ。そういうときに、クラブDJの仕事しかしてなかったら辛くなっていたと思うんですけど、他に興味のあることにも目を向けて、うまくバランスを取って両立させています。

複数の肩書きを持つことのメリットってどんなところにあると思いますか?
ユリア:それぞれが良い影響を与え合うことですね。知識の量が増えて、その知識が思わぬところで活かせたりする。また、関わる人も増えるので、多様な考え方を知れて勉強にもなるし、いいことしかない気がしています。

時代と合わなくなった価値観は柔軟に変えつつ、
芯にある自分らしさは守りたい

この先新しくチャレンジしていきたいことはありますか?

ユリア:着物に関しては、本を作ってみたいと思っています。着物に興味はあるけど慣れ親しんでない方でも、写真で見て楽しめるような内容にしたいですね。また、YouTubeを始めたことで、思っていたことを言語化したり、話すスキルを高めていきたいと思うようになりました。最近はファッションに関する内容の動画も増やしたり、まだまだ試行錯誤中です。

ユリアさんは、ご自身の「自分らしさ」はどのようなところだと思われますか。「自分らしさ」は柔軟に変えていくべきものか、それとも守るべきものか、どのようにお考えですか?

ユリア:いろいろなことに興味を持って、取捨選択して好きなことを掘り下げて、その中で残った芯が集合したものが自分らしさになっているのだと思います。自分では自分のことを合理的で割と柔軟だと思っていますが、芯の部分まで変わっていくのは違うと思っていて。芯は守りつつ、時代と合わなくなったことは都度変えていくべきかと思いますね。

UCCは「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」をパーパスに掲げ、コーヒーの新たな可能性を追求し、いままでにないコーヒーの価値創造にチャレンジしています。ユリアさんにとってコーヒーはどのような存在ですか?

コーヒーは昔からずっと生活の中にあります。子どもの頃、金沢に住んでいる祖母が定期的に宅配便を送ってくれたのですが、その荷物の中になぜか必ずインスタントコーヒーが入っていました。
いまは毎日挽いてある豆を使って、ペーパードリップでコーヒーを淹れて朝に飲んでいますね。ブラックも飲みますが、冬になるとカフェラテやウィンナーコーヒーも飲みたくなります。
旅先でお土産として買うのも好きで、ここ最近はシンガポールのコーヒーを家で飲んでいます。純喫茶も昔から好きで、京都や上野エリアにいくつかお気に入りの喫茶店があります。
Photo : Yuji Ueno
Text : Riho Nakamori