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苗木から収穫まで

急勾配で育つコーヒー

ブルーマウンテンエリアは、コーヒーの適地であっても管理する人間にとっては厳しい環境です。標高800〜900mの山岳地帯のため、場所によっては傾斜が40度にもなります。コーヒー栽培はすべて人の手によって行われますが、慣れた人間でも足を滑らす程の急斜面で行う作業は大変な重労働なのです。

まずは1本の苗木から

コーヒーの木はまず苗木まで育ててからその後農園に移植されます。苗木を購入する農園が多い中で、UCCでは品質の良いコーヒーを生産するために、重量がある充実したコーヒーの実だけを選別して種子を取り、一本一本の苗木をビニールポットで育てるところから行っています。

また農園での水遣りも、他農園ではあまり見られない、スプリンクラー灌漑などの設備を整えるなど新しい栽培技術を取り入れています。

枝を切り、太陽から守る

コーヒーの木は、発生する腋芽(えきが:葉の付け根にできる芽)などを除去するために適宜剪定されます。不要な芽でも養分要求度は高いので、施した肥料の養分を取られないようにするのです。

また、コーヒーは気温の高い地域で育つ作物ですが、意外にも直射日光を好みません。特にブルーマウンテンコーヒーのようなアラビカ種の場合、30℃以上の気温で長く日にさらされると葉焼けで落葉してしまうこともあります。

そこで、コーヒーの木を守る日傘の役割を果たす日陰樹(シェードツリー)が一緒に植えられます。ジャマイカの日陰樹として一般的なバナナの木は、食用にもなりますが、土壌の水分を大量に吸収してしまうため、本来は日陰樹に向きません。UCCブルーマウンテンコーヒー直営農園では、多くの水分を必要とせず、しかも空中の窒素を土中に固定でき、適度に日を通す小さな葉のマメ科の高木(インガ、エモテル、グワンコなど)にどんどん切り替えています。

雑草も緑肥に

収穫作業の邪魔にならないように、また木の生長を妨げないように除草も行います。ジャマイカでは、除草剤を使う場合もありますが、マシェットと呼ばれる刀のような道具を使って人力で除草していきます。

刈った後の雑草は、コーヒーの木の周りに集めてマルチング(農作物の根際を藁や草などで覆う栽培法のこと)することで緑肥になり、土壌水分の蒸散防止にもなるので、UCC ブルーマウンテンコーヒー直営農園では有効利用を考慮してこまめに除草を行っています。

農園がにぎわう実りの季節

大切に育てたコーヒーの木は、3月頃からジャスミンのような香りを放つ真っ白な花を一斉に開花させます。やがてコーヒーチェリーと呼ばれる通り実が真っ赤に熟すと、農園は一年のうちでもっとも活気づく収穫のシーズンを迎えます。40〜50人の収穫作業員を近隣の村から集め、完熟した豆のみひとつぶひとつぶ手で摘み取っていくため、収穫された実の成熟度合いは均一で、品質のばらつきも殆どありません。

ジャマイカでは、収穫したコーヒーチェリーの計量に独特の木箱を用います。この木箱がいっぱいになると約27kg。木箱のどこまでチェリーが入ったかで歩合給が支払われる仕組みになっています。