コーヒーチェリーから生豆へ
コーヒー豆は、コーヒーの木にできた赤い実「コーヒーチェリー」の種子です。
図のように、コーヒーチェリーは、外側から外皮、果肉、ミューシレージ(粘液質)、パーチメント(内果皮)、シルバースキン(銀皮)、種子の構造になっています。
この種子の外側の部分を取り除き、焙煎前の生豆と呼ばれる状態にする工程のことを「精製」といいます。
水洗式と非水洗式
精製方法は大きく分けて「水洗式」と「非水洗式」の2種類があります。
また、この他にも生産地の気候や環境を利用した様々な方法がとられています。
水洗式
水洗式(「ウォッシュド」とも言います)の工程は、以下のような流れになります。
❶ 選別
水洗式では、コーヒーの実を収穫後、水槽に入れます。成熟豆が水に沈むことを利用して、混入物や未熟豆を除去する作業を「水比重選別」と言います。
❷ 果肉除去
選別された成熟豆の外皮と果肉を、バルパー(果肉除去機)により除去します。
❸ ミューシレージ除去
種子の表面に付着している粘液質のミューシレージを取り除く伝統的な方法として「ファーメンテーション」と呼ばれるものがあります。
この方法では、果肉除去した状態の豆を大きな水槽に入れます。こうして、ミューシレージが空気と接触することで、自然に分解するのを待ち、水を使って洗い流します。
近年では節水や環境負荷が少ない「エコウォッシュド」が普及しています。
❹ 乾燥
ミューシレージを取り除いた豆は、天日または機械により乾燥させ、生豆の水分含有率を12%以下にします。
❺ 脱穀
乾燥された豆は脱穀機にかけてパーチメントを剥がし、生豆にします。
❻ 選別
風力や比重による選別、振動により選別するスクリーン選別、場合によってはハンドピッキングにより欠点豆などを除去します。
セミウォッシュド
セミウォッシュド(「パルプドナチュラル」とも言います)の工程は、以下のような流れになります。
ウォッシュドとセミウォッシュドの違いは乾燥前に粘液質のミューシレージを除去するか、残すかの違いといえるでしょう。
近年、スペシャルティコーヒーが注目されるなか、味わいの差別化をはかるために、ミューシレージの残し方を工夫する生産者もいます。
またコスタリカでは、水質保護の観点から、ウォッシュドに代わって、水を使わずに機械の力でミューシレージを取り除いてから乾燥させる方法が普及したのですが、ミューシレージの除去率を変えることで風味に変化が生まれるため、新しい精製方法として注目されるようになりました。
このミューシレージがハチミツのようにトロっとしていることから「ハニープロセス」と呼ばれるようになり、現在では様々な国で採用されています。
❶ 選別
収穫されたコーヒチェリーを水で比重選別します。
❷ 果肉除去
完熟豆だけを果肉除去器で外皮と果肉を剥ぎ取ります。
❸ ミューシレージをある程度残す
種子の表面に付着しているミューシレージを機械で削りますが、完全には削り取らず、ある程度残した状態にします。
❹ 乾燥
ある程度ミューシレージを残した状態で乾燥させます。
❺ 脱穀
乾燥された豆は脱穀機にかけてパーチメントをミューシレージごと剥がし、生豆にします。
❻ 選別
比重や色彩、スクリーン(サイズ)などによる選別、場合によってはハンドピッキングにより欠点豆などを除去します。
スマトラ方式 | 精製では、豆を乾燥させる工程が必要ですが、インドネシアのマンデリンコーヒーを栽培する地区では、雨が多い気象条件に加え、インフラ設備が整っていなかったため、上記のような精製方式の使用も困難でした。そこで独自に編み出されたのがスマトラ方式です。 ❶ 果肉除去 選別後のコーヒーチェリーから、果肉除去器で外皮と果肉を剥ぎ取ります。 ❷ 一次乾燥 ミューシレージが付着した状態で約半日、天日で乾燥させます。 ❸ 脱穀 表面だけが乾燥し、中は水分を含んだ状態の豆を脱穀して生豆を取り出します。 ❹ 二次乾燥 水分を含んだ生豆を再び乾燥させます。 |
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非水洗式
非水洗式(「アンウォッシュド」「ナチュラル」「天日式」などとも言います)の工程は、以下のような流れになります。
❶ 乾燥
収穫したコーヒーの実をそのまま天日または機械で乾燥し、水分含有率12%前後にします。
これによって、外皮、ミューシレージ、パーチメントが一緒の状態で乾燥されます。
❷ 脱穀
脱穀機により外皮、果肉、ミューシレージ、パーチメントを一度に脱穀し、生豆の状態にします。
❸ 選別
風力や比重による選別、振動によるスクリーン選別、場合によってはハンドピッキングにより欠点豆などを除去します。