裏面表示からわかる生産国
コーヒー製品を購入したとき、パッケージ裏面の表示を見たことがありますか?
市販のコーヒー製品は、原料であるコーヒー豆について情報の記載が義務付けられていますので、中身を表す裏面表示をチェックしてみるのも選び方のひとつです。
メーカーごとに多少の違いはありますが、「生豆生産国名」の記載に注目して見比べてみましょう。
例えば、生豆生産国名に「ブラジル」とだけ表記されているので、使っているのはブラジル産のコーヒーのみとなります。
また「ブラジル、コロンビア他」などと表記されている場合は、ブラジル産、コロンビア産、さらに他の国のコーヒーも使ってブレンドしたコーヒーということがわかります。
コーヒー豆は生産国によって、味の傾向や特徴があるので、表示を見ることで豆がどの国から来たかを知ることができれば、味をイメージしやすくなるかもしれません。
「コーヒーベルト」について
現在、コーヒーを栽培している国はおよそ70カ国あり、赤道をはさんで南北緯25度間の「コーヒーベルト」(または「コーヒーゾーン」)と呼ばれる地域で栽培されています。
各生産国で飲用目的に栽培されているのは「アラビカ種」か「カネフォラ種ロブスタ」のいずれかですが、同じ種でも自然環境、栽培方法、加工方法など、各国・各地域の生産工程や栽培条件の違いにより、様々な特徴のコーヒーになります。ここでは、コーヒーを選ぶときの基礎知識として世界の主な生産国を紹介します。
コーヒーの産地:アメリカ・カリブ海
ハワイ(アメリカ合衆国)
南国生まれの人気コーヒー
8つの島、そして120以上もの小島が連なっているハワイ州。
その中でも「ビッグアイランド」の愛称で親しまれているハワイ島は、質の高いコーヒーを生産していることでも知られています。
■呼び方
ハワイ島のコナ地区で生産されるコーヒーは「ハワイコナ」「コナ」などと呼ばれています。
「ハワイコナ エクストラファンシー」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:爽やかな酸味と適度なコク
ハワイ島コナ地区には、UCCの直営農園があり良質なハワイコナを栽培しています。
ジャマイカ
バランスの良さは日本人好み?
カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカの東側に連なるブルーマウンテン山脈には、「ブルーマウンテンエリア」と呼ばれる良質なコーヒーが栽培される地域があります。
他の生産国のコーヒーは麻袋に詰めて出荷されますが、「ブルーマウンテン」は、樽詰めで出荷されます。
■呼び方
国内基準が決めたブルーマウンテンエリアで栽培されたコーヒーだけが「ブルーマウンテン」と呼ばれます。
「ブルーマウンテン No.1」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。そのほかの地域で栽培されたコーヒーは「ハイマウンテン」などと表記されて流通します。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:香り、酸味、コクのバランスがとれた軽やかな風味
ジャマイカには、UCCの直営農園があり良質なブルーマウンテンを栽培しています。
メキシコ(メキシコ合衆国)
ラテンアメリカ最北端の生産国
メキシコでコーヒー栽培が始まったのは1790年のこと。
今では、国別生産量で常にトップ10入りする生産国に成長しています。
■呼び方
一般的には「メキシコ」と呼ばれています。
「メキシコ AL(アルツーラ)」など格付けを表す等級と一緒に表記されることも。
■栽培品種
アラビカ種/カネフォラ種ロブスタ(主にアラビカ種)
■味わいの特徴
アラビカ:甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味
グアテマラ(グアテマラ共和国)
マヤ文明の栄た地から
グアテマラのコーヒーは、その多くが山脈の斜面で栽培されています。
また栽培している地域によって気候条件も様々で、バラエティに富んだ味わいのコーヒーを生産している国でもあります。
■呼び方
一般的には「グアテマラ(ガテマラ)」と呼ばれています。
「グアテマラ アンティグア」などの地域名や、「グアテマラ SHB」などの格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味
ホンジュラス(ホンジュラス共和国)
中米の名産地のひとつ
標高による温度差が激しいため、コーヒー栽培には最適の環境を備えています。
東西にのびる2000メートル級の山脈沿いにコーヒー産地が集中しています。
■呼び方
一般的には「ホンジュラス」と呼ばれています。
「ホンジュラス SHG」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味
エルサルバドル(エルサルバドル共和国)
中米一の小国で育つコーヒー
エルサルバドルでは、主に高原や山岳地帯の斜面で栽培されています。
■呼び方
一般的には「エルサルバドル」と呼ばれています。
「エルサルバドル SHG」のように格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味
コスタリカ(コスタリカ共和国)
美しい自然が育むコーヒー
スペイン語で「豊かな海岸」を意味する国名どおり、東はカリブ海、西は太平洋に面しています。
主に、首都を中心にした山間盆地と、それを取り囲む4つの火山山麓で栽培されています。
■呼び方
一般的には「コスタリカ」と呼ばれています。
「コスタリカ SHB」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
アラビカ種:透明感のある明るい酸味と長く続く甘い余韻
コロンビア(コロンビア共和国)
農園ではラバもお手伝い
南米ではブラジルに次いで第2位の国別生産量を誇るコロンビア。
コーヒーの商業取引上の分類であるマイルドコーヒーの代名詞としても知られています。
国土の大半が山岳高原地帯で、収穫したコーヒーの運搬にはラバが使われることも。
■呼び方
一般的には「コロンビア」と呼ばれています。
「コロンビア メデリン」などの地域名や、「コロンビア スプレモ」など格付けを表す等級と一緒に表記されることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:甘い香りとしっかりした酸味とコク、重厚な風味
ブラジル(ブラジル連邦共和国)
押しも押されもせぬコーヒー大国
世界No.1のコーヒー生産国ブラジル。その量は世界の総生産量のおよそ3割を占めています。
今からおよそ100年前にブラジルへ移住した日系人の苦労が、今のコーヒー大国を作り上げたことも知っておきたい史実です。
■呼び方
一般的には「ブラジル」、もしくはブラジルの代表的な輸出港「サントス港」にちなんで「サントス」と呼ばれています。
「サントス No.2」など、格付けを表す等級と一緒に表記されることも。
■栽培品種
アラビカ種/カネフォラ種ロブスタ(主にアラビカ種)
■味わいの特徴
非水洗式アラビカ:甘みを伴った、やわらかな苦味と適度な酸味
水洗式アラビカ:甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味
コーヒーの産地:アフリカ・中東
イエメン
歌にも歌われた『モカマタリ』
アラビア半島の西側に位置するイエメンは、エチオピアに次いで古くからコーヒーが栽培されている国です。
■呼び方
イエメンとエチオピアで生産されるコーヒーは、かつてイエメンにあった積み出し港「モカ港」にちなんで「モカ」と呼ばれています。
ちなみに、流行歌の歌詞にもなった「モカマタリ」は、イエメンの代表的なコーヒーです。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
非水洗式アラビカ:フルーティーな甘い香りと柔らかな酸味とコク
エチオピア(エチオピア連邦民主共和国)
コーヒー発祥の地
コーヒーの木が発見された国。高原でコーヒーの実を食べて興奮しているヤギを見て、ヤギ飼いカルディがその実を食べてみたと言う説話が伝わっています。
このエチオピアを起点として、世界中の生産国へとコーヒー栽培が伝播していきました。
■呼び方
エチオピアとイエメンで生産されるコーヒーは、かつてイエメンにあった積み出し港「モカ港」にちなんで「モカ」と呼ばれています。
エチオピア産のモカはアフリカコーヒーの代表的存在になっています。
店頭では「モカ ハラー」「モカ シダモ」などの生産地区の名前、「モカ G-1」など、格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
非水洗式アラビカ:フルーティーな甘い香りと柔らかな酸味とコク
水洗式アラビカ:しっかりした酸味とコク、芳酵で重厚な風味
ケニア(ケニア共和国)
赤道直下の生産国
野生の王国、サファリなどで名が知られているケニアも、アフリカ有数のコーヒー生産国です。
コーヒーは古くから栽培され、主要産業のひとつになっています。
■呼び方
一般的に「ケニア」と呼ばれています。
店頭では「ケニア AA」など、格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:しっかりした酸味とコク、芳酵で重厚な風味
タンザニア(タンザニア連合共和国)
アフリカ最高峰が生んだコーヒー
アフリカ東部に位置するタンザニア。
かつては、国の北東部にあるアフリカ最高峰「キリマンジァロ」の斜面で栽培されていたため、「キリマンジァロ」の名称で呼ばれていました。
現在では、タンザニア産のアラビカ豆すべてを「キリマンジァロ」と呼びます。
■呼び方
タンザニア産のアラビカ豆すべてを、一般的には「キリマンジァロ」、取引上は「タンザニア」と呼んでいます。
また「キリマンジァロ AA」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種/カネフォラ種ロブスタ(主にアラビカ種)
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:しっかりした酸味とコク、芳酵で重厚な風味
コーヒーの産地:アジア・オセアニア
ベトナム(ベトナム社会主義共和国)
成長著しい注目の産地
ベトナムは、近年急激に生産量を伸ばしているコーヒー生産国です。
あらかじめ練乳を入れたグラスに直接金属製のドリッパーを置いてお湯を注ぐ独特の飲用スタイルは、日本でもおなじみになりました。
■呼び方
カネフォラ種ロブスタは「ベトナム ロブスタ」などと呼ばれますが、主にブレンド用やインスタントコーヒーの原料などに使われるため、単品で店頭に並ぶことはほとんどありません。
■栽培品種
カネフォラ種ロブスタ/アラビカ種(主にカネフォラ種ロブスタ)
■味わいの特徴
非水洗式カネフォラ:柔らかな苦味と独特の香ばしさ
インドネシア(インドネシア共和国)
コーヒーを育む群島国家
大小合わせて1万以上の島々から構成されている国・インドネシア。
1699年にインドからコーヒー栽培が伝わってきましたが、19世紀になって「さび病」の発生によりアラビカ種の木が一時全滅するなどの危機もありました。
現在は、スマトラ島、ジャワ島などを中心に世界有数のコーヒー生産国になっています。
■呼び方
アラビカ種は「マンデリン」「バリ アラビカ」などの名前で流通しています。
カネフォラ種ロブスタは「ジャバ ロブスタ」「インドネシア ロブスタ」などと呼ばれ、そのまま飲まれるのではなく、ブレンドなどに使用されることが多いコーヒーです。
■栽培品種
カネフォラ種ロブスタ/アラビカ種
(栽培量が多いのはカネフォラ種ロブスタで、良質なアラビカ種も栽培している。)
■味わいの特徴
非水洗式カネフォラ:柔らかな苦味と独特の香ばしさ
水洗式カネフォラ:すっきりした苦味と特有の香ばしさ
水洗式アラビカ:香り、酸味、コクのバランスがよい重厚な風味
インド(インド共和国)
最初に伝わったコーヒーの木は盗品だった!?
紅茶のイメージが強いインドは、コーヒー生産量も意外に多く、国別生産量では常にトップ10に入っている国です。
コーヒーの栽培史も古く、1600年頃にイエメンのイスラム寺院で厳重に監視されていた苗木が持ち出され、インドに伝わったのがはじまりと言われています。
■呼び方
一般的に「インド」と呼ばれています。
「インド プランテーションA」など格付けを表す等級と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種/カネフォラ種ロブスタ(主にアラビカ種)
■味わいの特徴
水洗式アラビカ:軽やかな酸味とコク、穏やかな風味
水洗式カネフォラ:すっきりした苦味と特有の香ばしさ
中国(中華人民共和国)
お茶の産地で作られるコーヒー
コーヒーよりもお茶のイメージが強い中国ですが、実は雲南省などではコーヒーも栽培しています。
標高の高いところにある高原は昼夜の温度差も激しく、コーヒー栽培に適した環境を備えています。
■呼び方
一般的には国の名前そのままに「中国」と呼ばれていることが多いようです。
「中国 雲南」など、地域名などと一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種/カネフォラ種ロブスタ (主にアラビカ種)
■味わいの特徴
アラビカ種:ナッツのような風味と適度なコク、チェリーのようなやわらかい酸味
オーストラリア(オーストラリア連邦)
オージー・コーヒーはいかが?
18世紀にブラジルからコーヒーが持ち込まれたことで栽培が始まりましたが、そのときは栽培条件や労働力不足などで生産量もごくわずかで、コーヒー栽培が根付いたのは20世紀になってからのことでした。
■呼び方
一般的には「オーストラリア」と呼ばれています。
「オーストラリア マリーバ」など生産地域の名前と一緒に表記されていることも。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
アラビカ種:フルーティーでなめらかな口当たり、穏やかな酸味
日本
日本でもコーヒーが育つ!?
日本は、赤道をはさんで南北緯25度のエリア「コーヒーベルト」に含まれない位置にあります。
コーヒー栽培にふさわしい環境とは言えないため、他の生産国に比べ生産量はごくわずかですが、小笠原諸島や沖縄など、比較的温暖な気候の地域ではコーヒー栽培をしているところもあります。
■呼び方
日本産コーヒーとしては、農園独自の名前などが付けられて販売されているものもあります。
■栽培品種
アラビカ種
■味わいの特徴
アラビカ種:酸味・甘味のバランスが取れたやわらかい味わい