開発秘話
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それは、今をさかのぼること50年以上も前のある日のことでした。 全国を駆け回っていた、UCCの創業者・上島忠雄が、列車が停車した駅で瓶入りミルクコーヒーを買って飲んでいました。ところが、列車が予想外に早く出発することになり…「仕方ない。飲み残すしかないか…」
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当時、瓶は店に返さなければならなかったため、飲み残したまま忠雄は列車に飛び乗ったのです。しかし、忠雄は飲み残したミルクコーヒーのことがいつまでも心にひっかかっていました。「いつでも、どこでも、手軽に飲めるコーヒーは作れないだろうか…」「そうだ!瓶を“缶”にすればいいんだ!」
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早速、忠雄自ら先頭に立って 「缶コーヒー開発プロジェクト」を発足させました。しかし、コーヒーとミルクの分離や、高温殺菌による味の変化、さらには鉄とコーヒーの成分が化学反応を起こしてしまうなど、缶コーヒー開発における問題は山積みでした。
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そして、ついに1969年(昭和44年)4月、世界初のミルク入り缶コーヒーが誕生したのです。赤、白、茶色でデザインされた世界初の缶コーヒーは、「UCCコーヒー ミルク入り」(通称「3色缶」)の名称で商品化されましたが、発売当初はなかなか消費者に受け入れられませんでした。そこで「とにかく人目のつくところで販売しよう」と、営業マン自ら、売店で大声で缶コーヒーを指名買いしたり、電車に持ち込んで飲んだり、全社あげての販売活動を展開しました。
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その頃、格好のビッグイベント“大阪万国博覧会(昭和45年)”が開催されました。万博を機に缶コーヒーを売り込もうと積極的な営業活動を行いました。そして、万博が開催されると、缶コーヒーは爆発的に売れはじめました。 会場で缶コーヒーを飲んだ人からの返り注文が殺到し、ついには工場が日夜生産しても追いつけない状態に。まさに万博は缶コーヒーデビューの晴れ舞台となったのです。
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今では年間約3億5千万ケースも飲まれる巨大市場となった缶コーヒー。その礎を築いたのが、「いつでも、どこでも、一人でも多くの人においしいコーヒーを届けたい」という思いから、1969年に誕生したこのUCCの缶コーヒーだったのです。