ブラジル

ブラジルと言えば、サッカー、リオのカーニバル、肉料理のシュラスコなど、人々を魅了するスポーツや文化が盛んな南米の大国。また、熱帯雨林のジャングルを流れるアマゾン川など、大自然も広がる何とも魅力的な国だ。

そんなブラジルを語る上で外せないのは、コーヒーだ。ブラジルは世界一位のコーヒー生産国であり、輸出国である。その割合は、世界の総生産量の約3割以上を占めており、日本のコーヒー輸入量の一位はブラジルだ。つまりブラジルは、世界の、そして日本のコーヒー文化を下支えしてくれている。
私たちが日々飲んでいるコーヒーはブラジルの豆が使われているかもしれない。そんなことを想像してみたら、地理的には日本から見て、地球の真反対にあるブラジルが、一気に身近に感じられる。

ブラジルで開催される、情熱的なコーヒーの一大イベント

UCCは自社農園を保有するほど「産地」を大切にしている。特に親交の深い産地のひとつが、ブラジル エスピリトサント州だ。2001年のコーヒークライシス（生豆が1ポンドあたり41.5セントという過去最低の価格まで下落し、作れば作るほど生活が苦しくなる状況になってしまった）への打開策としてUCCが始めた産地にまつわるアクション、コーヒー生豆の「品質コンテスト」は、ブラジルのエスピリトサント州が記念すべき最初の開催地だ。2001年に初めて開催されて以来、世界7カ国で20年以上続いている。

2022年に開催された「品質コンテスト」では、エスピリトサント州山岳地方の全アラビカコーヒー（商業向けに栽培されているコーヒーの2大品種のうちのひとつ）生産者のうち、約60もの農家がエントリーした。この中からまず20農家がファイナリストに選ばれ、優勝した生産者には賞金とその農園で採れたコーヒーの限定販売（買付け）が行われる。買付けは10位までを対象に行われ、買付けした入賞コーヒーは家庭用・業務用様々なコーヒーとなって私たちのもとへ届けられる予定だ。20年以上に及ぶこの取り組みは、現地共催Tristao社（80年以上続くブラジルのコーヒー事業会社）の一企業イベントを超えた州を挙げての行事に成長し、今や現地テレビ局やSNSによる中継なども行われるコーヒーの一大イベントになった。

品質コンテストが変えた、エスピリトサント州のコーヒー

「品質コンテスト」の応募には条件がある。そのひとつが、ナチュラル製法ではなく、セミウォッシュド製法で精製することだ。エスピリトサント州は、山岳地帯のため平地よりも厳しい気候の影響を受け、ナチュラル製法（収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させ、その後脱穀する精製方法）での品質向上が難しい。一方セミウォッシュド製法は、ウォッシュド製法（乾燥させる前にたくさんの水を使って果肉を洗い流す製法）とナチュラル製法の“いいとこどり”の精製方法と言われており、ウォッシュドで取り除く粘液をあえて残すことで水の使用量を抑えることができる。その結果、豆に残された粘着液が独特なアロマを生み、甘みの強いコーヒーになる。

UCCは2001年以来、このコンテストの開催とともに品質を高めるために生産者へノウハウを伝えるなど、技術支援も行ってきた。長年の取り組みは実を結び、エスピリトサント州の豆は地道にその品質を向上させ、2017年のCOE（Cup of Excellence：世界で最も有名なコーヒー豆の品評会）で初めて1位入賞するなど、スペシャルティコーヒーの名産地に肩を並べるまでになった。

こうして独自で高品質なコーヒーを安定的に作ることができるようになれば、そのコーヒーを高値で買いたいニーズも増える。それは、産地、農家を始め、コーヒーに関わる全員にとって幸せなことだ。そして、UCCはこのような取組みを継続的に行っていくことこそが「サステナブルなコーヒー生産」だと考えている。

地球の裏側で栽培されて、遠路はるばる運ばれて、私たちの口へと入るコーヒー。そのおいしさは、こうして産地や農家がワンチームとなって日々品質を磨いているからこそ味わえる、特別な一杯なのだ。