コーヒーの植物学コーヒーの植物学Botany 植物学Botany 植物学

コーヒーはどんな「植物」から
採れるのでしょうか?

コーヒーの成長過程や
実の構造、品種・分類などを解説します。
植物としての側面を知ることで、
コーヒーについての理解を深めてみましょう。

1.コーヒーノキ
という植物について1. コーヒーノキという植物について1. コーヒーノキという植物について

「コーヒー豆」とは「豆」ではなく、
アカネ科の植物
「コーヒーノキ」の
「種子」だということを知っていますか?

私たちがよく知るコーヒー豆は、「コーヒーノキ」という植物の実の中に入っている「種子」です。この実は、まるでさくらんぼのように赤く熟すことから「コーヒーチェリー」と呼ばれます。
コーヒーチェリーは外側から、「外皮(がいひ)」「果肉」「内果皮(ないかひ:パーチメントとも呼ばれます)」「銀皮(ぎんぴ:シルバースキンとも呼ばれます)」「種子」という構造になっており、種子の外側を取り除いたものが「生豆」と呼ばれます。コーヒーチェリーを加工処理してから乾燥した生豆の状態で輸出されます。

この2粒の種がコーヒーになるの?!断面図 〈コーヒーチェリーの構造図〉外皮 果肉 内果皮(パーチメント)銀皮(シルバースキン)種子この2粒の種がコーヒーになるの?!断面図 〈コーヒーチェリーの構造図〉外皮 果肉 内果皮(パーチメント)銀皮(シルバースキン)種子

コーヒーノキの実の中にある「種子」を
精製・焙煎したものが
コーヒー豆となります

  • この「種子」を取り出し、「精製(せいせい)」という加工工程で「生豆(なままめ)」と呼ばれる状態にします。

    実には通常2粒の種が入っているよ精製乾燥させてパーチメントと生豆にわけるんだ実には通常2粒の種が入っているよ精製乾燥させてパーチメントと生豆にわけるんだ
  • この生豆を「焙煎(ばいせん)」と言う工程で加熱加工することで、ようやく私たちが見慣れた、コーヒー豆になります。

    焙煎前はこのような色なんですね 焙煎 生豆に…熱を加えることでコーヒー豆になりました!焙煎前はこのような色なんですね 焙煎 生豆に…熱を加えることでコーヒー豆になりました!

2.コーヒーの
品種(種)について2. コーヒーの品種(種)について2. コーヒーの品種(種)について2. コーヒーの品種(種)について

数あるコーヒーの品種のうち、
飲用として流通しているのは
「アラビカ種」「カネフォラ種」の
2つです

植物学的に言うと、コーヒーは数十の種を持ちますが、飲用目的で栽培され流通しているのは「アラビカ種」「カネフォラ種(通称ロブスタ)」の2つです。(※その他、「リベリカ種」もありますが、商用としては扱われません)

  • アラビカ種
  • カネフォラ種ロブスタ
アラビカ種 カネフォラ種
ロブスタ
エチオピア 原産地 ビクトリア湖周辺から西アフリカ
〜3m 樹高 3〜6m
濃緑、楕円形 表面が波状
自家稔性 稔性 自家不稔性
世界中で最も多く栽培され、コーヒー生産量全体の58~63%を占めている。低地から高地にかけて栽培可能だが、サビ病等の病害虫に弱い。ストレートの飲用に適している。 特徴 低地で湿潤な土地で栽培される。生産量はコーヒー全体の37~42%だが、強健で病害虫にも強い。単品で飲むにはあまり適さず、主にブレンド用に使用される。

※稔性(ねんせい)について
・自家稔性:同じ株に咲く花同士で交雑して、次世代の種子が形成される性質。
・自家不稔性:同じ株に咲く花同士で交雑せず、他の株の花粉による受粉で、次世代の種子が形成される性質。

  • アラビカ種

    アラビカ種
  • カネフォラ種ロブスタ

    カネフォラ種ロブスタ

COLUMN

「アラビカ種」「カネフォラ種」
の使い分け

味わいの特長から「アラビカ種」はストレートでの飲用に適しており、「カネフォラ種」はストレートコーヒーとして味わう機会は稀で、ブレンドやアイスコーヒー等に多く用いられ、深いコクやパンチを与えています。カネフォラ種の品種は主にロブスタに限られ、その為、カネフォラ種は一般的にロブスタと呼ばれています。

「アラビカ種」「カネフォラ種」の使い分け
コーヒーの品種を分類表で見てみましょうレッツゴーコーヒーの品種を分類表で見てみましょうレッツゴー

コーヒーの分類についてはまだまだ解明されていない点も多く、現在でも品種の研究は世界各地で行われています。まとめると、おおよそ下の図の様な分類表になります。

被子植物門 双子葉植物網 アカネ目 アカネ科 コフィア属 エコウコフィア亜属 パラコフィア亜属 マスカロコフィア亜属 エリトロコフィア節 アラビカ種 アラビカ種の豆(品種)ティピカ ブルボン カトゥーラ カトゥアイ ムンドノボ マコラジッペ ローリナ(ポワントゥ)ゲイシャ カティモール(カネフォラ種との交配)アラブスタ(カネフォラ種との交配)カネフォラ種 カネフォラ種の豆(品種)カネフォラロブスタコニロン コンジェンシス種 コンジェンシス種の豆(品種)コンジェンシス チャロッティ バチコフィア節 リベリカ種 デュウェプレイ種 アベオクタエ種 リベリカ種の豆(品種)リベリゴ アルノルティーアノ エクセルサ バチコフィア節 ステノフィラ種 カリソイ種 マヨムベンシス種 モザンビコフィア節 シュマンニアナ種 コージノイデス種 ナノコフィア節 ファミリス種 トゴネシス種被子植物門 双子葉植物網 アカネ目 アカネ科 コフィア属 エコウコフィア亜属 パラコフィア亜属 マスカロコフィア亜属 エリトロコフィア節 アラビカ種 アラビカ種の豆(品種)ティピカ ブルボン カトゥーラ カトゥアイ ムンドノボ マコラジッペ ローリナ(ポワントゥ)ゲイシャ カティモール(カネフォラ種との交配)アラブスタ(カネフォラ種との交配)カネフォラ種 カネフォラ種の豆(品種)カネフォラロブスタコニロン コンジェンシス種 コンジェンシス種の豆(品種)コンジェンシス チャロッティ バチコフィア節 リベリカ種 デュウェプレイ種 アベオクタエ種 リベリカ種の豆(品種)リベリゴ アルノルティーアノ エクセルサ バチコフィア節 ステノフィラ種 カリソイ種 マヨムベンシス種 モザンビコフィア節 シュマンニアナ種 コージノイデス種 ナノコフィア節 ファミリス種 トゴネシス種

これらの品種が、世界中に渡り先々で
突然変異を起こして品種が増えていきました。
現在では、出荷目的で栽培されている
アラビカ種は20種類以上あります。
今でも世界中でコーヒーの研究は続いています

3.コーヒーノキの
成長と収穫までの流れ3. コーヒーノキの成長と収穫までの流れ3. コーヒーノキの成長と収穫までの流れ

コーヒーノキを
育て始めてから収穫できるまで
平均して3〜4年ほどかかります

コーヒーノキの苗から豆が採れるようになるまで、どのように成長していくのでしょうか?アラビカ種を例に、コーヒーノキの成長過程から収穫するまでの流れを見ていきましょう。

①育苗

コーヒーノキの種をまき
植え付けるための苗を育てます

育苗(いくびょう)の過程では、丈夫で、品種の特長をきちんと兼ね備えた木から採取した種子を、プラスチックポットに直接植えるか、種床で発芽させてからプラスチックポットに植え替えます。

種まきから発芽まではおよそ40〜50日。それから20日ほど経つと、子葉が開きます。更に30日ほど経つと本葉が開きます。

①育苗①育苗

②植付け

種まきから6〜9ヶ月後
育った苗を広い場所へ植え替えます

種まきをしてから6〜9ヶ月後、苗が20〜60cmになったら、圃場(ほじょう)に植え替えます。根の成長を助けるため、充分な大きさの穴を掘り、肥料と混ぜて土地と馴染むように苗を植えていきます。植える際に主根が真っ直ぐに伸びているか確認します。また主根の先を剪定バサミで切り落とすことで、側根の成長を促すこともあります。

②植付け

③開花

植付けから18〜30ヶ月後
ジャスミンのような白い花が咲きます

苗木から2〜3年かけて成長し、コーヒーノキは、ジャスミンのようなような香りのする白い花を咲かせます。

植付から最初の開花まで、早いところでは18ヶ月、遅くても30ヶ月かかります。最初の花は、幼木なので、数も僅かです。成木になるには、産地の気候によって大きく左右されますが、約3〜5年かかります。開花は、一斉に起こるわけでなく、約4ヶ月の間に5〜7回に分けて開花します。前半と後半の開花は小さく、中間の数回がピークです。

アラビカ種は基本的に自家受粉(自家稔性)し、蜂などの虫が受粉を助けています。それ以外の種は、他家受粉(自家不稔性)です。

③開花③開花

④結実

数日で花がしぼんだあと
「コーヒーチェリー」が実り始めます

コーヒーノキの花は、開花から2〜3日でしぼんでしまうのですが、花のあとに楕円形の実をつけます。

開花した花の約8割が結実します。結実すると花弁が落ち、小さな胡椒の実のような実が茎の先に見られるようになります。開花と同様、コーヒーチェリーも一斉に熟すのではなく、開花とほぼ同じパターンで収穫時期を迎えます。

④結実
いよいよ赤く完熟してきましたいよいよ赤く完熟してきました

コーヒーチェリーは開花から
約8ヶ月かけて「完熟豆」に成長

気象条件などで変わりますが、コーヒーチェリーは開花から約8ヶ月かけて徐々に大きくなり、完熟豆に成長します。
通常のコーヒーチェリーは、グリーン→黄色→赤と色が変わり、さらに熟すことで硬かったコーヒーチェリーに弾力がついてきます。このコーヒーチェリー中に向かい合わせで入った、2粒の種子がコーヒー豆です。

④結実

⑤収穫

産地の事情に
合わせた収穫方法

高品質を誇る産地では、山の斜面などでコーヒーを育てていることもあり、完全に熟した実だけを選んで人の手で一粒一粒収穫していきます。またブラジルなどの大型農園では、自動収穫機を使って収穫します。

⑤収穫

COLUMN

「ピーベリー」って何?

コーヒーの実には、平らな面を向い合わせにして2粒の種子が入っていますが、まれに片方だけが大きくなって、丸みを帯びて育つことがあり「ピーベリー」や「丸豆」と呼ばれます。

「ピーベリー」って何?
「ピーベリー」って何?
「ピーベリー」って何?