コーヒーはどんな「植物」から
採れるのでしょうか?
コーヒーの成長過程や
実の構造、品種・分類などを解説します。
植物としての側面を知ることで、
コーヒーについての理解を深めてみましょう。
1.コーヒーノキ
という植物について
「コーヒー豆」とは「豆」ではなく、
アカネ科の植物
「コーヒーノキ」の
「種子」だということを知っていますか?
私たちがよく知るコーヒー豆は、「コーヒーノキ」という植物の実の中に入っている「種子」です。この実は、まるでさくらんぼのように赤く熟すことから「コーヒーチェリー」と呼ばれます。
コーヒーチェリーは外側から、「外皮(がいひ)」「果肉」「内果皮(ないかひ:パーチメントとも呼ばれます)」「銀皮(ぎんぴ:シルバースキンとも呼ばれます)」「種子」という構造になっており、種子の外側を取り除いたものが「生豆」と呼ばれます。コーヒーチェリーを加工処理してから乾燥した生豆の状態で輸出されます。
コーヒーノキの実の中にある「種子」を
精製・焙煎したものが
コーヒー豆となります
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この「種子」を取り出し、「精製(せいせい)」という加工工程で「生豆(なままめ)」と呼ばれる状態にします。
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この生豆を「焙煎(ばいせん)」と言う工程で加熱加工することで、ようやく私たちが見慣れた、コーヒー豆になります。
2.コーヒーの
品種(種)について
数あるコーヒーの品種のうち、
飲用として流通しているのは
「アラビカ種」「カネフォラ種」の
2つです
植物学的に言うと、コーヒーは数十の種を持ちますが、飲用目的で栽培され流通しているのは「アラビカ種」「カネフォラ種(通称ロブスタ)」の2つです。(※その他、「リベリカ種」もありますが、商用としては扱われません)
アラビカ種 | カネフォラ種 ロブスタ |
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エチオピア | 原産地 | ビクトリア湖周辺から西アフリカ |
〜3m | 樹高 | 3〜6m |
濃緑、楕円形 | 葉 | 表面が波状 |
自家稔性 | 稔性 | 自家不稔性 |
世界中で最も多く栽培され、コーヒー生産量全体の58~63%を占めている。低地から高地にかけて栽培可能だが、サビ病等の病害虫に弱い。ストレートの飲用に適している。 | 特徴 | 低地で湿潤な土地で栽培される。生産量はコーヒー全体の37~42%だが、強健で病害虫にも強い。単品で飲むにはあまり適さず、主にブレンド用に使用される。 |
※稔性(ねんせい)について
・自家稔性:同じ株に咲く花同士で交雑して、次世代の種子が形成される性質。
・自家不稔性:同じ株に咲く花同士で交雑せず、他の株の花粉による受粉で、次世代の種子が形成される性質。
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アラビカ種
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カネフォラ種ロブスタ
COLUMN
「アラビカ種」「カネフォラ種」
の使い分け
味わいの特長から「アラビカ種」はストレートでの飲用に適しており、「カネフォラ種」はストレートコーヒーとして味わう機会は稀で、ブレンドやアイスコーヒー等に多く用いられ、深いコクやパンチを与えています。カネフォラ種の品種は主にロブスタに限られ、その為、カネフォラ種は一般的にロブスタと呼ばれています。
コーヒーの分類についてはまだまだ解明されていない点も多く、現在でも品種の研究は世界各地で行われています。まとめると、おおよそ下の図の様な分類表になります。
これらの品種が、世界中に渡り先々で
突然変異を起こして品種が増えていきました。
現在では、出荷目的で栽培されている
アラビカ種は20種類以上あります。
今でも世界中でコーヒーの研究は続いています
3.コーヒーノキの
成長と収穫までの流れ
コーヒーノキを
育て始めてから収穫できるまで
平均して3〜4年ほどかかります
コーヒーノキの苗から豆が採れるようになるまで、どのように成長していくのでしょうか?アラビカ種を例に、コーヒーノキの成長過程から収穫するまでの流れを見ていきましょう。
コーヒーノキの種をまき
植え付けるための苗を育てます
育苗(いくびょう)の過程では、丈夫で、品種の特長をきちんと兼ね備えた木から採取した種子を、プラスチックポットに直接植えるか、種床で発芽させてからプラスチックポットに植え替えます。
種まきから発芽まではおよそ40〜50日。それから20日ほど経つと、子葉が開きます。更に30日ほど経つと本葉が開きます。
種まきから6〜9ヶ月後
育った苗を広い場所へ植え替えます
種まきをしてから6〜9ヶ月後、苗が20〜60cmになったら、圃場(ほじょう)に植え替えます。根の成長を助けるため、充分な大きさの穴を掘り、肥料と混ぜて土地と馴染むように苗を植えていきます。植える際に主根が真っ直ぐに伸びているか確認します。また主根の先を剪定バサミで切り落とすことで、側根の成長を促すこともあります。
植付けから18〜30ヶ月後
ジャスミンのような白い花が咲きます
苗木から2〜3年かけて成長し、コーヒーノキは、ジャスミンのようなような香りのする白い花を咲かせます。
植付から最初の開花まで、早いところでは18ヶ月、遅くても30ヶ月かかります。最初の花は、幼木なので、数も僅かです。成木になるには、産地の気候によって大きく左右されますが、約3〜5年かかります。開花は、一斉に起こるわけでなく、約4ヶ月の間に5〜7回に分けて開花します。前半と後半の開花は小さく、中間の数回がピークです。
アラビカ種は基本的に自家受粉(自家稔性)し、蜂などの虫が受粉を助けています。それ以外の種は、他家受粉(自家不稔性)です。
数日で花がしぼんだあと
「コーヒーチェリー」が実り始めます
コーヒーノキの花は、開花から2〜3日でしぼんでしまうのですが、花のあとに楕円形の実をつけます。
開花した花の約8割が結実します。結実すると花弁が落ち、小さな胡椒の実のような実が茎の先に見られるようになります。開花と同様、コーヒーチェリーも一斉に熟すのではなく、開花とほぼ同じパターンで収穫時期を迎えます。
コーヒーチェリーは開花から
約8ヶ月かけて「完熟豆」に成長
気象条件などで変わりますが、コーヒーチェリーは開花から約8ヶ月かけて徐々に大きくなり、完熟豆に成長します。
通常のコーヒーチェリーは、グリーン→黄色→赤と色が変わり、さらに熟すことで硬かったコーヒーチェリーに弾力がついてきます。このコーヒーチェリー中に向かい合わせで入った、2粒の種子がコーヒー豆です。
産地の事情に
合わせた収穫方法
高品質を誇る産地では、山の斜面などでコーヒーを育てていることもあり、完全に熟した実だけを選んで人の手で一粒一粒収穫していきます。またブラジルなどの大型農園では、自動収穫機を使って収穫します。
COLUMN
「ピーベリー」って何?
コーヒーの実には、平らな面を向い合わせにして2粒の種子が入っていますが、まれに片方だけが大きくなって、丸みを帯びて育つことがあり「ピーベリー」や「丸豆」と呼ばれます。