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2023.02.09
2022年末、アメリカ合衆国ハワイ州ハワイ島にあるUCCハワイコナコーヒー直営農園にて、「GLOBALG.A.P.認証」を取得しました。これは、持続可能な生産活動を実践するための国際標準の生産工程マネジメントで、コーヒー農園としては世界的にも先行事例がほとんどなく、日本企業では初の事例となります。
今回はこのGLOBALG.A.P.認証についてと認証取得までに苦労した点などを合わせてご紹介いたします。
G.A.P.(ギャップ) とは、GOOD(適正な)、AGRICULTURAL(農業の)、PRACTICES(実践)の略で、GLOBALG.A.P.(グローバルギャップ)認証とはそれを証明する国際基準の仕組みを言います。世界120か国以上に普及し、事実上の国際標準となっています。農業版ISOとも呼ばれる厳格な管理が特徴で、東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村の食材調達の基準にも採用されたことで注目を集めました。
欧米の大手小売をはじめ、最近では日本の小売でもGLOBALG.A.P.などの国際認証を取得した生産者からの仕入れを優先しています。
GLOBALG.A.P.認証は、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる世界共通のブランドで、取引先との信頼性や企業価値向上に貢献します。
GLOBALG.A.P.を実践することにより、産地としても多くのメリットが期待されます。例えば、国内および海外への輸出販路の拡大であったり、生産工程を明確化することで生産性が向上し、資材コストの削減に繋がったりもします。また、新人・外国人労働者への効果的トレーニングを積極的に行うことで意識向上にも繋がったりと、教育効果も期待できます。さらには、緊急時のリコール体制の確立などリスク管理としても有効的です。
このようにGLOBALG.A.P.は、農業生産者が安全で持続可能な農業を実践することで、取引先や消費者との信頼性構築、透明性確保の手段として活用されています。
今回、認証取得を目指した背景としては、世界的な食品の安心・安全への要望の高まり、地球温暖化の影響による病害虫の蔓延や生産効率の減少などコーヒー産業を取り巻く環境の変化が挙げられます。認証を取得するには、認証団体が規定する病害虫対策、土壌管理、品質管理などに関連した300項目以上の要求事項を満たす必要があるため、農園のあらゆる情報を記録、管理し、よりよい営農活動に反映させていくシステムの導入がポイントとなりました。
実際に認証取得に向けて進めていく中では、例えばエネルギー消費量や工程ごとの歩留まり(輸出規格品や副産物の割合)の記録など、これまで確認できていなかった様々な内容が要求事項に含まれていたため、時間を見つけては一項目ずつ従業員への教育を行い、新たなプロセスをルーティン化していくのには苦労しました。
また、新たなウェットミル設備の導入(右画像:設備の一部を導入している様子)を行うことで達成される要求事項も数多くあり、認証取得に向けた準備と設備導入の投資案件を同時並行で進めていく必要がありました。一方で、当時はコロナウイルス感染拡大の影響で製造工場の停止や労働者不足などが世界規模で発生しており、アメリカ国内の物流網にも多くの課題を抱えておりました。その中でスケジュール管理や業者との調整を進めていくことは非常に大変でしたが、苦労の甲斐あって認証取得を達成することができました。
こうした取り組みによって実現したGLOBALG.A.P.認証取得は、コーヒーの安心安全はもちろんのこと、地球温暖化による気候変動の影響や栽培管理工程で危惧される様々なリスクを低減できると期待しています。
既に歩留まりの向上などは一定の成果がでており、またゴミの低減などサステナビリティに配慮した農園経営にも寄与しています。今後は取得した認証を保有し続けられるよう、農園に関わるすべての人、もの、資源を大切にし、農園スタッフ一丸となって取組みます。
(画像・コメント:UCCハワイ直営農園駐在員 小林 司ゼネラルマネージャーより)
コーヒー農園におけるサステナビリティに向けての挑戦はまだ始まったばかりですが、UCCはこれからも高品質でおいしいコーヒーを安心・安全に、そして安定的にステークホルダーのみなさまにお届けするために、持続可能なコーヒー産業の実現に貢献してまいります。
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