UCC Sustainability ChallengeUCC サステナビリティチャレンジ

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2023.01.26

UCC品質コンテスト(ブラジル)の表彰式が開催されました

「UCC品質コンテスト」とは、特定の産地におけるコーヒー生産者を対象にした、コーヒーの品質などに関するコンペティションです。2022年下半期、世界最大のコーヒー生産国であるブラジルで品質コンテスト2022が開催されました。このブラジル エスピリトサント州での品質コンテストは2001年にコーヒー相場が過去最低の価格である生豆1ポンドあたり41.5セントまで下落した「コーヒークライシス」がきっかけで始まりました。当時、生産コスト割れで廃業・転作・生産放棄が相次いだことから、危機を感じたエスピリトサント州政府から依頼され、農家保護・産業振興を行うためUCC品質コンテストが開始しました。
▶▷ UCC品質コンテスト詳細はこちら

現在ではサステナビリティ評価も審査項目に加わり、コーヒー農家、産業にとっても大きな役割を果たすまでに進化しています。
今回はそのコンテストの詳細と優勝者のコーヒーに懸ける想いが綴られたコメントをご一緒にお届けいたします。

ブラジル品質コンテストについて

品質コンテストの概要について

今回のブラジル エスピリトサント州での品質コンテストは、2022年9月5日~11月25日の期間にエスピリトサント州山岳地方の全アラビカコーヒー生産者を対象に実施されました。

この期間中に応募された生産者は約60農家にものぼりました。この中からまず20農家のファイナリストを絞り込み、順位確定の最終審査が12月1日に開催されました。左画像はその最終審査の表彰式の様子です。

優勝した生産者には賞金とその農園で採れたコーヒーの限定販売(買付け)が行われます。
例年は20位まで買付けているのですが、今年は円安の影響で10位までの買付けとなっております。買付けした入賞コーヒーは家庭用・業務用様々なコーヒーに使用される予定です。

このブラジルでの品質コンテストは、年々認知度も高まっており、継続開催してきたUCC品質コンテストの役割は、現地で高く評価されています。
例えば、今では現地共催Tristao社の一企業イベントを超えた、州を挙げての行事に成長しており、現地テレビ局やSNSによる中継なども行われています。

この品質コンテストをきっかけにコーヒーの品質向上だけでなく、地域のブランディング化も進んでおります。

生産者の方とサステナブルな関係性を築くために・・・

ブラジル エスピリトサント州は、山岳地帯のため平地よりも厳しい気候の影響を受け、ナチュラル製法(収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させて、その後脱穀する精製方法)での品質向上が難しく、これまで他地域よりも低級品として扱われてきました。
ナチュラル製法は乾燥した気候や広大な土地に適していますが、山岳地帯では降雨や気温の影響から乾燥日数が伸びやすくダメージ発生リスクも高まる為、チャレンジングな製法になります。

しかし、このコンテストでは精選工程として、ナチュラル製法ではなく、セミウォッシュド製法(パルプドナチュラル)が応募条件となっています。
セミウォッシュド製法は、乾燥させる前にたくさんの水を使って果肉を洗い流すウォッシュド製法とナチュラル製法の“いいとこどり”の精製方法と言われており、ウォッシュドで取り除く粘液をあえて残す、水の使用量を抑えた精選方法です。その結果、セミウォッシュドは豆に残された粘着液が独特なアロマを生み、甘みの強いコーヒーになります。

UCCは2001年以来、ただコンテストを開催するというだけではなく、品質を高めるために、生産者の方へノウハウを伝えるなど、技術支援も行っています。
長年コンテストを継続開催してきた結果、確実にエスピリトサント州産のコーヒー品質は高まっております。例えば、2017年これまで低級品とされてきた同州産コーヒーがCOE(Cup of Excellence:世界で最も有名なコーヒー豆の品評会)で初めて1位入賞するなど、スペシャルティコーヒーの名産地に肩を並べるようにもなりました。
生産者の方が独自で高品質なコーヒーを安定的に作ることができるようになれば、そのコーヒーを高値で買いたいという方も増えるので、結果として持続可能なお付き合いができるようになるのです。
まさに、このような取組みを継続的に行っていくことこそが「サステナブルなコーヒー生産」に繋がると考えています。

また、コンテストは2021年の開催20周年を機に「サステナビリティ視点」も評価に加わっています。サステナビリティ評価とは、ファイナリストに対し20のサステナビリティ評価項目(例えば、トレーサビリティや肥料の使用ルール、土壌管理などといった項目)を設け、しっかりと遵守できているか確認をします。サステナビリティ評価項目を達成しているかどうかは、第3者機関の農技師が実際に現地農園を回り、お話を聞きながらチェックをしています。
評価点数としては、100点満点中、カップテスト(味覚・品質)が80点、サステナビリティ項目が20点となっています。サステナビリティ項目も全体の2割の点数があてられるなど、いかにサステナビリティ観点が生産においても重要視されているのかが分かります。

このようにより良いコーヒーを作るために尽力されている農家の方と長くお付き合いをする、まさにサステナブルな関係性であるために、UCCも品質コンテストの中身を見直し、より良い関係性が築けるようブラッシュアップしております。

コンテスト優勝者たちのコメント ~どんな思いでコーヒーを育てているのか~

1位:<農園主> Jose Antonio Debona Romaoさん

(ヒストリー)
Jose Antonio氏一家は100年以上コーヒー栽培に従事してきました。コーヒーとの共生は彼の祖父-父と繋がり、現在Jose Antonio氏の奥様と2人のお子さんと共にカステロ市農村部にある農園に住み受け継いでいます。

(コンテストについて)
コンテストへの参加はとても素晴らしいもので、楽しんでいます。高品質コーヒーの栽培に励んだ結果、トリスタン/レアルカフェ/UCCに認められ、今回のチャンピオンに選ばれた事にとても感謝しています。スペシャルティコーヒーを作りたいと思い始めてから20年以上経ちますが、エスピリトサントの山でこのムーブメントの一端を担えることを光栄に思っています。

(コーヒーの生産と品質のカギ)
まず重要なのは、家族が愛情を込めてコーヒーを生産していること、農園管理に毎日多大な注意を払うことです。また、このロットの秘訣は「厳選された収穫」でした。農園内の状態をくまなくチェックし、数か月に及ぶ収穫期間の中で最高の成熟度合のチェリーのみを厳選し7回以上かけて収穫する事で実現出来ました。

(コーヒーを楽しむ皆さんへのメッセージ)
高品質なコーヒー生産はとても難しいことですが、愛情を込めて栽培しているので、コーヒー農家の日々の仕事に価値を見出して頂ける様に、高品質コーヒーをぜひ味わって頂きたいです。

2位:<農園主> Marcos Antonio Tomaziniさん

(ヒストリー)
1902年、Tomazio Tomaziniは、Castelo(Bateia地方)で新しい土地を探しました。当時、コーヒーの生産を試みましたが、風が強く寒冷な気候のため、実を形成することが出来ませんでした。しかし、2000年代に入って、Marcos、Solimar、Clesiomar兄弟がスペシャルティコーヒーの生産を開始しました。彼らはコーヒー農園の新しい取組みとして、木の栽培間隔を狭くした高密度栽培、高品質な品種、使用されていなかった土地の乾燥場利用等を採用し、品質向上を探求しました。そして、彼らが正しい方向に進んでいる事を時間が証明してくれました。その後Clesiomar氏は他界しましたが、弟のMarcos氏とSolimar氏が親族と共に遺志を引き継いでいます。

(コンテストについて)
夢を実現できる場であり、沢山の人達への思いを込めて育てられた努力の結晶を手に入れる事が出来るのです。ファイナリストに残る事は脳内で映画の主役になる様なもので、このステージに到達するために通過してきた困難な状況・試練と幸福の狭間で、自分が特別なコーヒーを生産しているという自覚が生まれる事です。私たち家族にとってコンテストは本当に特別で、地域社会にも非常に特別で重要であると感じています。

(コーヒーの生産と品質のカギ )
信念、熱意、根気強さ、しっかり働く事。

(コーヒーを楽しむ皆さんへのメッセージ)
私たちの生活や家族に変化をもたらしてくれるのは皆さんです。皆さんが良いコーヒー、正真正銘のコーヒーとは何かを評価してくれることが、私たちに仕事を続ける活力を与えてくれます。

3位:<農園主> Claudia Krause Battestinさん

(ヒストリー)
この土地は、1950年に彼女の祖父と父親によって開墾されました。当時、この地域にはコーヒー農園はありませんでしたが、1960年にブラジルコーヒー協会の支援を受け、栽培を開始しました。1964年に水洗式コーヒーの生産が始まりましたが、その価格はパルプドナチュラルやセミウォッシュドといった水洗式コーヒーの生産コストをカバーするものではありませんでした。何度も襲ってきたコーヒー業界の危機により、生産性の低下や肥料代確保で畑の管理状態も大幅に低下しましたが、コーヒー生産を諦めることはありませんでした。

(コンテストについて)
品質コンテストが始まった時、魅力的な価格であった事から高品質コーヒー生産に戻ることを希望し、2001年にウェットプロセス用機械を購入しました。それ以来私たちは品質向上に励み、エスピリトサント山脈で生産されるコーヒーの品質可能性を見出すのに不可欠なこのコンテストへ第1回目から参加しています。この品質コンテストがきっかけで私たちはコーヒー生産者として高品質コーヒーを生産し続け、より安定したコーヒー活動を維持できるようになったのです。

(コーヒーの生産と品質のカギ)
農園の好立地、良質な土壌、肥料の適切な投与、農薬や病害虫の管理、収穫時の厳選された収穫と準備。また、天候に恵まれることも、収穫後のプロセスをより良いものにし、高品質のコーヒーを作るための条件となります。

(コーヒーを楽しむ皆さんへのメッセージ)
コーヒーはユニークな飲み物ですが、テロワールや地域によって異なる風味や香りがあり、常に心地よい味わいを求める愛好家にとって、コーヒーは特別な体験となるため、コーヒー生産者に一層の価値を与えます。

UCCグループは生産者の方が丹精を込めて育てたコーヒーを多くの方に飲んでいただくために、コーヒーを買付し製品化する予定です。


◇関連URL
▶▷ UCC品質コンテスト(ジャマイカ)の記事はこちら


※「UCCサステナビリティチャレンジ」は、UCCグループのサステナビリティビジョン「コーヒーの力で、世界にポジティブな変化を」に基づく
目標の達成のため、グループ全体で日々取り組んでいるさまざまなサステナブルアクションをご紹介するコンテンツです。

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